貸付用不動産・小口化商品の見直しとは

相続税対策として不動産を活用することは、多くの資産家や不動産オーナーにとって重要な選択肢です。ところが、2026年度(令和8年度)の税制改正により、相続税における不動産の評価方法が大きく見直されることになりました。特に「貸付用不動産」と「不動産小口化商品」については、従来の節税スキームがほぼ通用しなくなります。
本コラムでは、不動産オーナーの皆様に向けて、2026年度改正の概要・影響・今後の対策までわかりやすく解説します。
1.相続税における不動産評価の基本をおさらい
まず、現行制度における不動産の評価方法を確認しておきましょう。
| 区分 | 現行評価方法 | 評価額の特徴 |
| 宅地(自用地) | 路線価方式 (公示価格の約80%) | 市場価額より 低くなりやすい |
| 貸付用不動産 | 貸家建付地評価+借家権 割合による控除 | 実際の市場価格より2~3割低く評価されることも |
| 不動産小口化商品 | 受益権などの権利評価 (時価より低め) | 実際の市場価値との 差が大きい場合も |
こうした評価差により、「現金を不動産に変えて相続時の課税額を減らす」いわゆる相続対策スキームが広く行われてきました。
2.2026年度税制改正の主な変更点
2026年度改正では、国税庁が「資産評価の適正化」を目的に、大きく二つのポイントで制度を見直します。適用は令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与からです。
(1)貸付用不動産の評価方法の見直し
● 改正の概要
相続直前に取得または新築した貸付用不動産(例:賃貸アパート、貸ビル等)は、**市場価額ベース(取得価額+地価変動を反映)×80%**で評価されることになります。
この対象となるのは、被相続人が亡くなる前5年以内に取得・建築した貸付用不動産です。
5年を超える期間保有している場合は、従来通りの「路線価方式」で評価できます。
● 改正の狙い
これまでの制度では、相続前に現金を使って収益不動産を購入すると、路線価評価により
評価額が市場価額の7割程度に抑えられ、**「駆け込みでの節税」**が可能でした。
しかし新制度では、市場に近い価格(約8割)で評価されるため、短期的な節税効果はほぼ消滅します。
● 実務への影響
・相続直前の「新築アパート投資による節税対策」は封じ込められます。
・長期保有には影響が少ないため、早期に取得しておくほど有利です。
・相続対策では、保有期間の計画的管理と資金繰りの再検討が必要になります。
📌 ポイントまとめ
・対象:相続開始前5年以内に取得・新築した貸付用不動産
・評価方法:取得価額×地価変動率×80%
・目的:駆け込み節税の防止
(2)不動産小口化商品の評価方法の変更
● 改正の概要
不動産特定共同事業や信託受益権などによる「不動産小口化商品」も、今後は常に市場価額(通常の取引価額)で評価されます。
適用開始は貸付用不動産と同じく、令和9年(2027年)1月1日以後の相続・贈与からです。
● 改正の狙い
これまで、不動産小口化商品は金融商品としての評価方式により、実際の市場価額との乖離が生じていました。
たとえば「1口1,000万円程度の不動産投資信託型商品」では、相続税評価が実勢より低くなるケースが多く見られ、節税目的での需要が拡大していました。
しかし今回の改正により、取得時期を問わず常に市場価額で評価されるため、評価差を利用した節税は事実上できなくなります。
📌 ポイントまとめ
・対象:不動産特定共同事業による出資持分・信託受益権など
・評価方法:常に市場価額(通常の取引価額)
・影響:節税メリットが減少、投資目的が「収益性中心」に転換
● 実務への影響
・節税を目的とした小口化投資の魅力は低下。
・相続対策としてではなく、「安定収益や流動性」を重視した投資へシフト。
・小口化商品の販売業者にも影響が及び、市場再編が進む見込みです。
3.今回の改正がもたらす「3つの大きな影響」
(1)相続直前の対策が困難に
これまでの「現金→アパート購入→評価圧縮」という短期スキームは通用しなくなります。
今後は早期に不動産を取得し、5年以上の保有を前提にした長期的対策が必要です。
(2)不動産の実勢価格重視の時代へ
市場価額による評価が標準化され、これまでのような「路線価との差」を狙う節税戦略は難しくなります。
同時に、不動産管理や運用実態が重視される傾向が強まります。
(3)資産承継の「見える化」が進む
相続資産がより実態に即して評価されることで、相続人間の公平性が保たれやすくなります。
法人化や生前贈与などの「税務と実務の一体化」が重要になっていきます。
4.不動産オーナーが今からすべき3つの準備

(1)保有資産の棚卸しと評価シミュレーション
保有不動産の種類・取得時期・収益状況を整理し、改正後にどれくらい評価が変わるかを
事前に試算しましょう。
(2)5年以上の保有計画を立てる
新築・購入を検討中の方は、2027年以降の相続を見据えて、「いつ取得するか」が節税効果を大きく左右します。
(3)相続税対策の再構築
不動産による評価圧縮が難しくなる分、法人化・生命保険活用・家族信託などとの組み合わせが不可欠です。
専門家(税理士・不動産管理会社)との連携が有効です。
5.まとめ:改正後は「長期保有×実需重視」の時代へ
2026年度税制改正によって、不動産を使った相続税対策の常識は大きく変わります。
これからは、**節税だけに頼らない“本質的な資産形成・承継”**が求められます。
特に不動産オーナーの皆様は、今こそ以下を意識しましょう。
・相続までの保有期間を意識的に計画する
・評価だけでなく、運用・収益力を高める
・専門家と共に中長期の相続戦略を設計する
改正は2027年1月1日からですが、実務対応や資産整理は今からでも遅くありません。
弊社では、不動産の管理・運用から相続税対策まで一貫したサポートを提供しております。
「今後の制度の影響が気になる」「賃貸不動産の見直しを検討したい」とお考えの方は、
ぜひお気軽にご相談ください。
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